ずっと我慢していた
ほんの少し触れてしまうだけで壊れてしまうと思った
今まで積み重ねてきた何もかもが
崩れ去った瓦礫の下には深い溝が刻まれるだろう
そうなると分かっていたのに
何がこの手を突き動かしたんだ
しびれを切らしたようにこの手がこの指が震えた
壊すことは容易いのだ
破壊と再構築の物語 延々と続く人間的な営み
僕の手が意を決しそれにそっと触れたとき
それは少し傾きかけた まだ崩れはしない まだ・・・
どこからともなく「崩れるかと思った」と声がした
僕を止めようと言うのか
崩れてしまっても仕方がないと固まっているのに
破壊を止めようとするその言葉
そういたらしめたのは誰だ
因果を分かっていながら見過ごしたんだ
反動で手に力が入る 強く押し出す
眼前のものは音も立てずに消え去った
その瞬間 遠く 視界が開けた
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